Canon越しの世界

スウェーデンでの生活を、自分の目とカメラを通して、ゆるく発信していきます

生の血を飲んで、いのちについて考えた話

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ごくんと、つばを飲み込み、息を吸って、吐いて、

心の中で「いただきます」と唱えてから。

私は人生で初めて、ヤギの血を飲みました。

 

私にとって、生きることを考えるのに必要な、本当に貴重な経験。

 

 

今回は、そのマサイ族の村に行ったときのことを書きます。

 

正直、いろいろ刺激が強すぎました。

 

しばらく書こうか迷ってたんだけど。

あの時の感覚を忘れたくない、ちゃんと言語化しなきゃ!って思って。

 

言語化するのそんな得意じゃないからものすんごい時間かかっちゃうけど、雨の音を聞きながら、ゆっくり書いています。

 

 

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とっても綺麗な服を着ています。村のみんながお出迎えしてくれました。

 

 

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お家はこんなかんじ。もちろんガスも電気も水道もありません。

なんとこのお家、セメントと牛の糞で作られているんだよ!

 

 

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暖をとったり調理するために部屋で火を焚くのですが、その煙がのぼって、天井に溜まって固くなったものを棒で削ると、こんな土みたいなのがほろほろと落ちてきます。これをマサイの人は、胃薬として飲むらしい。

効くのかなぁー。

 

 

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女性は耳たぶに大きな穴があいていた。

ビーズで作ったアクセサリーをたくさんつけます。

耳の穴は、小さい頃に開けて、それを時間をかけて広げていくんだって。

穴にプレートのようなものを入れて、その大きさをどんどん大きくしていく。

文化によって、なにを美しいとするか、かなり違うんだなぁ。

 

 

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私も耳に実際に同じものをつけてみたんだけど…

 

重すぎぃぃぃぃ!!!!

 

耳たぶ引きちぎれるわ!

 

写真の笑顔は、ほんとはめちゃくちゃ引きつってます。

 

 

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首につけている土星の輪っかみたいなのと、ネックレスが当たって

軽くジャンプすると、シャンシャンってタンバリンのような音が出る。

ジャンプしながら、みんなで一緒に歌います。

 

 

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みんな踊って歌って楽しそうだなぁって見てたら、「おいで!」って手を引かれ、あったかい笑い声に包まれながら、みんなに囲まれて一緒に踊った。よくわからないまま、手をつないでジャンプし続けた。

 

 

めっちゃ楽しかった。

 

 

 

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そんなかんじでわいわいしてたら、

 

「ヤギがとれたぞ」

 

って声がかかった。

 

ぞろぞろと男の人がいるところに行く。

 

ヤギが、横たわっていた。

 

 

マサイ族の人がその動かなくなったヤギを取り囲んで、ナイフで綺麗に捌いていく。

皮をすーっと剥ぐと、その下に半透明の膜があって、それを破ると真っ赤な内臓が見えた。

内臓を素手で取り出し、器にほいほいと入れていく。手術しているようだった。

 

本当に真っ赤だった。

 

 

この生の肉を、そのまま食べるんだ、マサイ族は。

 

 

その光景を見るのは人生初めてだった。

気がついたら眉間にしわが寄っていて、顔がこわばっていた。

 

こういうのはグロいな、って目を塞いでしまう私だけど、頭のどこかで、しっかり見ておきたいとも思っていた。

 

2メートルくらい離れたところから、一部始終を見ていた。何回も顔が歪んだと思う。

 

内臓を取り終えてから、マサイ族の人が血を飲んでみたい人ー!って私たちに聞いた。

周りにも欧米系の人がいたんだけど、

oh my goodness definitely NO って声が聞こえた。

誰かは小さな声で 野蛮だわ って言ってた。

 

 

マサイ族の人はこの血を飲んで生活しているんだよなぁ。

どんな生活しているか目の前で見ていて、経験できるチャンスがあって、これを逃すのはもったいない。

 

そう思って、数歩前に出て、2メートルの距離を縮めた。

 

はい!私、飲んでみたいです。少しだけで大丈夫です!ほんとに、すこーしだけで。

 

ただひたすら「キドーゴ!(少しだけ)」と言ってたら、「ハイナシダ~(大丈夫)」とマサイのおじちゃんは茶色い歯を見せた。

 

マサイの人が小さなプレートを持ってきて、それでヤギの体の中にたまった血をすくった。

 

一口くらいの量の血は、少し赤黒くて、どろっとしていた。

一気に飲もうか、ちびちび飲もうか。

 

未知なるものを目の前に鼓動がどんどん速くなるのを感じながら、ゆっくりとプレートを唇のもとに持っていった。

 

 

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唇が血と触れ合った瞬間、重みを感じた。

 

そして、びっくりした。

 

 

 

 

 

あったかい。

 

 

 

 

体温だった。

 

 

 

いのちだった。

 

 

 

 

ただただ五感で、味わっていた。

 

 

 

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さらさらしたものではなく、例えるなら濃厚なポタージュみたいな感触。

舌の上が、錆びた鉄の味でいっぱいになる。

匂いはそこまでない。臭くない。

ちょっぴりスモーキーだなと、息を吐いた時に鼻の奥の方で感じる。

勇気を出して喉に流し込んだ時、数滴の血が、喉の壁をゆっくりと伝うのを体全体で感じていた。

 

 

とっても、不思議な感覚だった。

 

生きた血が、体に入っていく。

 

 

ごちそうさまでした。

 

少し先に見えるヤギを見て、そう思った。

 

一口の血をいただいた後、体で感じていたことを、頭がいろいろ処理しようとしてたけど、あんまり追いついていかなくて。

 

ぽけーーっと、砂漠に舞い上がる砂埃を見てた。

 

ずっと胸はドキドキしてた。

 

 

口の中がしばらく血の味がしたので、水を口に含んで吐き出したら、普通に真っ赤な水が口から出た。それを見て、ぎょっとした。

 

 

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マサイ族の人の自家製ミルクティーを飲みながら、マサイ族の方とお話した。

 

ヤギや牛を毎日遊牧する生活について。生まれてから、死ぬまで。

ずっと、遊牧と狩りをして過ごす。

たまにキリンを狩ることもあるんだって。

キリン1頭で、村全体で1週間は生活できるんだって。

ライオンを狩ると、勇者のしるしがもらえる。

ガゼルとかヤギとか牛とかを狩っても、しるしはもらえないらしい。

そのしるしっていうのは、腕にあって。

どうやってこのしるしを付けるの?って聞いたら、

赤くなるまで熱した鉄の輪を、じゅぅっっと腕に当てるだけだよ!ハハハ

って、自慢げに腕に残るそのしるしを見せてくれた。

 

どれだけ強い男なのかは、どれだけ狩りをしっかりできるか、で証明できる。

だから、とっても大事なしるし。

 

 

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私もそのしるしある〜!

って自分の腕にあったハンコ注射の跡を見せて、ケタケタ笑い合ったのはいい思い出。

 

まさかこんなタンザニアの奥地でマサイ族との共通点になるなんて、ハンコ注射の跡自身、絶対思ってなかったよね。笑

 

 

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ぴょんぴょん跳ねる、マサイの人。

 

 

いろんな感情がぐるぐるしながら家に帰った。

同じホームステイ先にいるヨエルっていうスウェーデン人に、ヤギの血を飲んだんだって言ったら

 

WTF なんでそんなことしたの? You are way too brave..... (ドン引き)

 

って文字通り目をまんまるにして言われた。

 

because life is short

人生は短いから。

 

答えはこれに尽きる。

 

 

「僕みたいな毎日病院で働いている人は、血が一滴でも自分についたら終わりだから、血がどれだけの病原体を運んでいるか知ってるから、もう考えられないよ。血を触る、ましてや飲むなんて!」

 

その上に、彼はタンザニアではベジタリアンなんです。肉も魚も食べない。

スウェーデンではビーガンだから、卵も乳製品も食べない。

動物が関わっている食べ物は一切口にしないんです。

I just don’t like killing って言ってた。

 

 

彼がマサイ族の村に行った時の経験を話してくれた。

 

「僕は肉を食べません。」

 

って村で言ったら、マサイ族の人みーんなびっくりして、「じゃあ何を食べてるの?」聞かれたらしい。

野菜だよって答えたら、不思議がられたようで。

肉以外に食べるものはないでしょう?って聞くマサイ族の人に

「じゃあ牛は何を食べているの?野菜だよね。牛を殺す代わりにそれを食べればいいじゃないか」

って言おうとした時、「これは価値観の押し付けだ」って気づいて、結局何も言わなかったんだって。

 

 

ちなみにマサイ族は、動物の肉と、血と牛乳で、生きています。(動物は主に牛)

野菜はほとんど食べません。

 

 

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これはマサイ族が牛乳を入れるのに使っている水筒。

ひょうたんから作られているよ。

私たちが飲んでる牛乳は低温殺菌されているけど、マサイ族は普通に牛乳を殺菌せず飲んでいます。お腹を壊すことは、まったくない!

 

 

彼と、ビーガニズムのことについて話した。

この世界には、飢餓で苦しんでいる人が何億人といる。

そんな中、私たちは牛に与えるためだけに穀物を育てて、牛を食べている。

その穀物で、どれだけの人間が救えるか、考えたことある?

って話をしたんだ。

 

そして、私がスウェーデンに留学していた時、4ヶ月くらいベジタリアンだったことも話した。

 

20歳の誕生日を境に、ベジタリアンになってみよう。って思って、なってみたんです。

ベジタリアンになった次の日にケバブをうっかり食べてしまって、この上ない罪悪感に苛まれたことはここだけの話ですが。

 

 

スウェーデンの大学で取っていた、Critical Animal Studiesっていう本当に面白い授業で学んだのがきっかけでした。

 

動物を、社会学、心理学、歴史学、経済学、自然環境学、人科分類学…etcの観点からクリティカルに考えてみようというもので、かなり学際的な新しいフィールド。

一緒に授業を受けている人は、ベジタリアン、ビーガンだけでなく、獣医さん、お母さん、心理学専攻の人、インド文化を学んでいる人、学校の先生になりたい人もちろん留学生も取れる授業なのでとっても国際的で、バックグラウンドも様々でした。ちなみに教授2人はビーガン!

 

その授業でたくさんのドキュメンタリーを見たりや論文を読んだりして、不都合な真実を突きつけられたんです。

 

ホルモン剤を打たれて、身動き取れないケージの中で、ただひたすら人間に食べられるために生産されている動物たちがいること。

 動物を育てるために莫大な水や飼料が消費されていて、それが環境問題につながっているということ。

 飢餓で死ぬ人がいる一方で、肥満で死ぬ人がいるということ。

 

その他にもいろいろありますが、上記またはそれ以外の理由を考慮して、ベジタリアン・ビーガンになる人がいます。

 

ベジタリアンとかビーガンっていう異文化を体験してみて、新しく見える世界がありました。

 

価値観がガラッと180度変わったわけではないけど、その4ヶ月、栄養のことをもっと考えるようになった。いのちが、この資本主義経済の中でどう扱われているのか関心を持つようになった。

 

肉を食べない代わりに、どんな栄養素が足りていなくて、どんなものを食べたらいいのか。ファストフードのお肉は、どのようにして作られているのか。お肉を増やすために動物たちはどんな薬を体に打たれているのか。

 

 

最後の論文では、私がベジタリアンになると決めてから、どのように世界に対する考え方が変わったか。そして体が変わったか。その軌跡について、日本の食文化の変遷を交えながら書いた。

 

 

私たちが日常で口にするお肉の大半は、命ではなく、「モノ」として、工場で生み出されているんだなぁ。

 

残忍だと思われてしまうところは、消費者には見えなくなっている。

 

その綺麗にトリミングされて闇に葬られた部分を、直視することなく、私たちはスーパーでパックに入っている整った肉を手に取る。

 

そんな世界に住む私が、ヤギが1頭、村の中で殺されて捌かれているのを見て、「グロい」「かわいそう」「残忍」とかよく言えたもんだ。

 

工業化された、殺すために牛を人工的にぶくぶく太らせる文化の方がよっぽどおそろしいんじゃないか、って思ったりした。

 

 

マサイ族の、動物を食べる文化。

資本主義化された世界で生きる私たちの、動物を食べる文化。

同じように、動物を食べている。

どっちがいいとか悪いではなくて、ただ違うだけ。

 

でも。

 

マサイ族の人たちの、牛を大事に育てて、牛の肉を食らい、血を飲み、皮はカーペットにし、骨はアクセサリーにして、糞を固めて家を作り、時には牛を貨幣として物々交換する文化を見てから、

いのちを大事にするその姿を見てから、

私自身が、生きている血を口にしてから、

 

しっかり、いのちに感謝して、いただかなきゃ。

 

子どもの頃から教わってきたことけど、

この実体験を通して、そう心から感じたんだ。

 

いのちを食べて生きていく上で、この経験は、絶対忘れちゃいけないな。

 

スウェーデンで学んだことが、タンザニアでの経験に繋がった1日だった。

 

 

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夢が叶った瞬間。

ヤギの血を飲んだあと、マサイ族と一緒にジャンプした!

なんかすごく高くジャンプできたような気がしたんだけど、ヤギの血のおかげ…なのかな?

 

 

あーーーーすごい時間かかったけど、書けてよかった。

達成感!今の気分はこんなかんじ↓

 

明日も、いい1日になりますように。 晴れるといいな。

 

 

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