Canon越しの世界

自分の目とカメラを通して、日常をゆるく発信していきます

ターミナルで

 

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忘れもしません。

9月10日。日もとっぷりと暮れた、夜の10時。

今まで味わったことのない感覚を、私が味わった日。

それは、私の中の偏見が消えた瞬間に、立ち会った日でした。

  

 

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話はさかのぼり、6月の下旬。

 

タンザニアに来る前に、ヨーロッパをバックパックしていた時。

パリやブリュッセルで見た黒人の人に対して「こわい」と思っていたこと。

無条件にそういう感情を彼らに抱いてたこと。

それに気づいてしまった時、自分に対してものすんごい嫌悪感が襲ってきて、号泣したんです。

 

スウェーデンに留学して、いろんな人と会って、友達になって、人種とか国籍とか文化背景で人を差別・判断するracistって、なんなんだって思っていた。

彼らの思考回路が理解できなかった。

理解できないと思っていた。

 

なのに、人をこうやって見た目で判断している自分がいて。

人種差別をしている人たちと同じ思考回路を自分も持っているってこと

本当にショックで、泣いて泣いて泣きまくった。

 

 

思い切って、ポーランドユースホステルで、

私はパソコンの画面に映る人に、勇気を出して、自分の気持ちを打ち明けてみた。

 

私はこれからタンザニアに行くというのに、

黒人の方に対して「こわい」という感情を抱いていていいのかな。

うまく言語にできないんだけど、とっても自分が嫌だ……

 

ってことを、泣きじゃくりながら話した。

 

 

画面の向こうで

 

「こわい」って感情を持つことは別に悪いことじゃないよ。

その感情を否定するんじゃなくて、なんでそのような感情を持ったのか、考えてみるのが大事なんだよ。

 

って言ってくれた、ひとりの大人がいたんです。

タンザニアでのプロジェクトでいろいろ相談に乗ってくれていた方でした。

 

この言葉に、私は救われました。

足も届かない深い海で溺れている私を、ゆっくりと引き上げてくれたような言葉でした。

 

 

言葉って、すごいなぁって思います。

遠くにいても、画面越しでも、平面の上で活字になっても、

心に届いたら、ものすごく力になるからです。

 

私もそういう言葉を紡げる人になりたいなぁと思う今日このごろです。

 

  

 

じゃあ、私はなんで、こわいって思うんだろう。

そういえば、なんでだろう

 

 

考えた結果。

 

知らないから、こわいんだ。

 

って結論になりました。

 

 

じゃあ、とことん、知ろう。

 

 

初めてのアフリカである、タンザニアに行ったら、

たっくさん友達作ろう。

現地の人と、とにかく仲良くなろう。

誰よりも多くタンザニアの人としゃべって、価値観を共有して、文化を知ろう。

 

これが、ひとつの目標になりました。

タンザニアの学校や教育制度を学ぶことだけじゃない。

自分の中のもやもやを消すためにも、1ヶ月半でどれだけ現地化できるか。

これにかかってるな!

 

この涙を絶対無駄にしちゃいけないな。

 

って思ったんです。

 

 

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そんなことを決めてから、丁度1ヶ月後。

 

私はトイレの鏡に映る自分の姿を見ていた。

 

長いフライトの後で、顔もむくんでる気がする。

わくわくと、不安とが、入り混じっている、なんとも言えない顔をしている。

バックパックが、なんだか大きく見える。

あぁ。こんなちっぽけな自分が、ひとりでついにここまで来てしまったんだなぁ。と思いながら、歯磨きをしていた。

そして、水道水を口に含んだ時、水道水は絶対飲んじゃだめだと言われていたのを思い出し、「やばいっ、ここの水って安全なんだっけ?!」って瞬時に吐き出した。

 

変に心臓がどくどくしている。

 

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私は、タンザニアに行く飛行機に乗り換えするためにエチオピアアディスアベバ空港にいました。

その空港はアフリカで有数のハブ空港で、いろんな便が世界中に飛んでいます。

アジア人はほとんど中国人だった。ヨーロッパからの人もたくさんいた。

とってもインターナショナルなんです。

 

でもwifiが全然つながらない!

エチオピアの人に聞いたら、「下の階にあるターミナルに行けばあるよ」って言われので、言われたとおり行きました。

 

そのターミナルからはどこ行きの飛行機が出ているんだろう。

案内画面を見たら、全部アフリカ内の国だった。

 

 

エスカレーターを降りて、てくてくスマホ片手に歩いていたら、エスカレーターの方を向いて椅子がずらーーーーっと並んでいる待合室があって、座っている人はみんなアフリカ系の方でした。

 

エチオピアの空港だし、そこでは当たり前の光景なんだけど、でも、ちょっと、びっくりした。

 

薄暗い中、白い目だけが浮かび上がってて、みんなが私のことを見てる。

見てる。見てる。えええすごい見てる。

 

 

 

 

 

こわい。

 

 

 

 

 

と思った。

 

思ってしまった。

 

体がぎゅっとこわばり、足が動かない。

 

ふっと金縛りがとけたような感覚を覚えて、

あ、wifiと思いながらスマホをいじったけど、wifiはつながらなかった。This is Africa!)

 

下のターミナルで持った「こわい」という感情。

 

まだ私は知らないからしょうがない。ってどこかで思いつつ、

なんだか悲しくなって、苦しくなった。

グミをちまちまと食べながら、

タンザニア行きの飛行機を待っていました。

 

 

そして、このエチオピアの空港のターミナルで今、自分が感じたことを、大事にしようって思いました。

 

 

これが7月の下旬のことだった。

 

 

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そして、約1ヶ月半のタンザニアの滞在を終えて、帰国する9月10日。

 

行きと同じで、エチオピア乗り換え。夜の10時。

 

私は、まったく同じ下のターミナルに行った。

そういえば下の階は通じるんだっけ。

wifiが通じないこと、すっかり忘れてた。

 

そして、エスカレーターを降りて、周りを見回した時、はっとした。

 

wifi通じないんだった!と気づいたわけではなく。

 

 

私、前にここに来た時と全然違う感情を持っている!

 

ということに。

 

 

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7月に初めてこのターミナルに来た時と同じで、たくさんのアフリカ系の人がいた。

私に視線を向ける人もいた。

 

でも、最初にこのターミナルに来た時に感じた「こわい」という感情が、その時には全くなかったんだ。

 

私の頭には、タンザニアで出会った人が、浮かんでいた。

そして、「またここに帰ってきたいなぁ」と思っていた。

  

 

出会ったたくさんの学生。

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私の授業に真剣に参加してくれた生徒たち。これは地理の授業!

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いつもおいしいウガリを作ってくれたお母さん。

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アメを買うたびに仲良くなった道端のおじさん。

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電気もガスもないお家で幸せそうに暮らすマサイ族の家族。

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高校の視察をしたいって言ったら二つ返事で案内してくれた先生。

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村で一緒にジャンプしたマサイ族の女性たち。

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サファリでガイドをしてくれた博識なおっちゃん。

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一緒にピキピキ(バイク)に乗ってぎゃーぎゃー騒いだ友達Witnes。

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彼女のお家にもお邪魔した。

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家族の絵を描いてくれたマサイ族の村の子ども。照れ屋さんだったなぁ。

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 私が困っている時にピキピキに乗せてくれた安全運転おじちゃん。

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いつもハイナシダ〜(大丈夫)って言ってくれるおばあちゃん。

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フレッシュな野菜や果物を売っていた村のお母さんたち。

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折り紙を教えたら、私にたくさんのスワヒリ語を教えてくれた先生。

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ホームステイ先でたっくさん助けてくれたホストファミリーのおじいちゃんおばあちゃん。

孤児院を建てた、もともと孤児だったお父さん。

道でジャパーーン!!!って言いながらハイタッチを求めてきたおじいちゃん。

財布忘れた時、私が払うからバスのお金は払わなくていいよって言ってくれたお姉さん。

結婚しよーーーう!!!って握手してきたおもろいお兄さん。

 

 

たーーくさんのタンザニアの人に会い、友達になり、話し、笑い、そして別れを惜しんで泣いて。

 

タンザニアという国で生きる人、アフリカ大陸という日本からは遠い土地で生きる人を知ることができる機会を得て。

 

 

ターミナルで、隣に座っていた人とスワヒリ語でちょっとだけ会話できた時、嬉しくて、嬉しくて。

 

自分の中で、なにかがちょっと変わった。

 

 

そして、私の中の偏見が、ひとつ。

しゅわーーーっと小さな音をたててなくなった瞬間を、味わったんです。

 

 

あぁ。こうやって、偏見はなくなるものなのか。

 

 

それだけタンザニアと関われたんだな。

って思えたんです。

 

 

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飛行機で、隣になった人がマリの人でした。大使館で働いているらしい。日本が大好きで、日本語もぺらっぺらでした。

後ろに座っていた人は、ウガンダの人でした。ウガンダの農業を変えたくて、奥さんと子どもをウガンダに残して、日本で灌漑技術を学んでいるんだって!

 

 

飛行機の中。

エチオピア人とタンザニア人との違いも、ひと目で分かるようになったなぁ!

エチオピア航空のまぁまぁおいしい機内食を頬張りながら思った。

 

 

 マサイ族の村で会った人。携帯電話で好きな人とお話してるんだって!素敵。

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最近、思うんだ。

現地に行って、自分の五感で知ることって本当に大事だなぁと。

そして、偏見は絶対悪と思っていたけど、偏見はあって当然なのでは、と思います。

 

でも、偏見がひとつなくなるだけで、見ている世界はだいぶ違ってくるんじゃないかなぁ。

タンザニアに行って、偏見が消えていった瞬間を体験して、そう思います。

 

 

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世界ががらりと変わるというより、世界が優しくなる、そんなかんじ。

 

 

その国にどんな人が住んでいるのか。

その国で生まれた人はどんな生活をしているのか。

なにを信じて、なにを食べて、なにを愛して、生きているのか。

 

 

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どれだけネットで情報を集めても、やっぱり自分の実体験にはかなわない。

 

 

私はこれから生きていく上で、また自分の中の偏見に気づくかもしれません。

でも、その時は、なんでそう思っているのかな、って問いながらもっと知ろうとする努力をしようと思いました。

 

暗黙知をしっかり言語化してくのが大事だなぁと、私が尊敬するしげさんって方から学びました!ありがとうしげさん!

 

 

なんとなくこわいという感情を持ったまま、知らないことを知ろうともせず、偏見にまみれていることの方がよっぽどこわい。

 

 

自分の中の偏見は、自分でしか、壊せないから。

 

自分には偏見があるということをまっすぐ認めて、受け入れて、行動して、関わって、話して、聞いて、笑って、泣いて、変えていけるのは、自分しかいないんだなぁ。

 

 

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「私はracistなのかも」ってショックを受けたこと、そしてこわいという感情を持っていたことをネガティブに捉えるんじゃなくて、それをどのようにポジティブなものに変えていけるかなって考えなきゃだ。

 

 

ポーランドで流した涙は、ゆっくりと頬を伝って、タンザニアでえくぼに変わりました。

 

 

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Common sense is the collection of prejudices acquired by age 18.

常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションのことをいう。

- Albert Einstein (アインシュタイン) -

 

偏見のコレクションを一回捨てて、まっさらでピュアで、生まれたての赤ちゃんみたいな視点で世界を見ることができたら、どれだけ楽しいんだろう。って思うんです。 

 

 

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これは飛行機から見えたキリマンジャロ。凛々しく雲を突き抜ける姿は、圧巻でした。

右のほっぺたで傾く夕陽の熱を感じながら、いろんなこと考えたなぁ。

 

 

まずは、知ること。学ぶこと。

たくさんの人と関わって、たくさんのものを好きになること。

 

これは、人生をかけてずっと大切にしていきたいことです。

 

 

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長い文章をここまで読んでくれた方ありがとうございます…!

寒くなってきましたね!おでん食べたーい。

 

明日もみなさんにとっていい1日になりますように。

 

 

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