Canon越しの世界

自分の目とカメラを通して、日常をゆるく発信していきます

人生において大事なものってなに?って、プラハで2人のイラン人に聞いてみたんだ

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2ヶ月前のことですが、チェコプラハに行ってきました。

初めて東欧に行ったんだけども、息を飲むような景色に何回出会ったことか。

一緒に行ったのは、Zara

同じ寮に住んでいる友達で、プラハからスウェーデンに戻ったあとすぐイランに帰っちゃったんだけど、「ヨーロッパ最後の旅行は、かのんとプラハに行きたい」って言ってくれて。

授業の合間を縫って、プラハに3泊しました。

 

 

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私がこの旅行のことをブログに書いておきたいと思ったのは、

Zaraが人生についてたくさんのことを教えてくれたからです。

そして、Zaraの友達にも会ったんだけども、その方からも本当に考えさせられる時間と機会をもらったからです。

 

 

いろんな人生に触れた旅でした。

考えさせられた旅でした。

 

 

プラハはとっても素敵な観光地。

”みんな”がおすすめする、”行くべき”ところにもたくさん行った。

 

 

でも2ヶ月経って、私の心に残っているのは、美しい風景よりも、

Zaraと夜に髪を乾かしながら話したイランのことであったり、

座っておやつを食べながら話した日本のことであったり、

大聖堂の前で話した恋愛の話であったり、

スープを飲んだあとに話した学問を学ぶ意義であったり、

そして、プラハの街を歩きながら話した人生のことであって。

一緒に同じ空間で”考えた”時間だったんです。

 

 

わぁ、なんだか泣きそう。

 

 

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世界一美しい図書館に行ってきたよ。ストラホフ修道院の中にあります。

 

 

 

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中世の町並みってかんじ!

 

 

Zaraは、イランから来た、ずば抜けて頭がいい女性。

イランでトップの大学を卒業してその後大学院に進み、心理学を極めてた。

本当に極めていた。映画を一緒に見たあとは必ずディスカッションタイムがあった。笑

「あのシーンは心理学的にはね、」っていつも話を始めて、

「こんな角度からこう解釈することもできるんだ!」って私はいつも新しい発見をもらってました。

 

イランでは大学に入ることも、卒業することも、留学することも、女性にとっては本当に本当に難しいことなんだって。

Zaraは学位をとるためにPhDの学生としてスウェーデンに留学してました。

そして驚き桃の木サンマの開きだったのが、33歳だということ!

 

でも英語で会話してると、敬語がないから全く距離を感じない。不思議。

 

Zaraは私よりもひとまわり、ふたまわりたくさんの経験している人生の先輩だー!って思ってました。

 

でも、それ以上でした。

話を聞いていたら、想像を絶する経験もしていて。

でも自分が今まで頑張ってきたこととか、イランの素敵なところもいっぱい話してくれた。

イランに絶対来てねって言われたから、絶対行く。

 

 

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Zaraが住んでいるのは、イランの首都テヘラン。イラン文化の中心地。

スマホでたくさんの寺院や絨毯、陶器、そしてペルシャ猫の写真を見せてくれた。

イランの歴史も教えてくれた。頭の整理も兼ねて、ちょっと書いときます。

 

イランは今はイスラム教国家だけど、ササン朝ペルシャの時代まではゾロアスター教の国家だったらしい!ササン朝が滅びて、モンゴルからの侵略があり、イスラムシーア派を国教とするサファヴィー朝が1500年頃にできてから、イスラム化が進んだ国。ここの土地は、ヨーロッパとアジアが交わるかなり重要な場所だったから土地をめぐっての争いがたくさん起きたんです。世界史で習った膨大な量の王朝や都市や人の名前は、呪文のようだった。どうしても覚えられなかったから、ちびまるこちゃんのおどるポンポコリンの歌に合わせて、王朝の歌をせっせと作っていた高校3年生だったなぁ。

 

20世紀に入って、イランの近代化を進める動きが始まりました。脱イスラム化を図った政策としては、チャードルと呼ばれる女性が着る黒い布の着用を禁止して洋服着用例を発令したり、農地改革や識字運動などを進めたよ。1960年頃にパフラヴィー2世が起こした「白色革命」って呼ばれる、いわゆる西洋化運動です。でもかなり急激なものだったので、結果としてイラン・イスラム革命を引き起こすことになりました。

 

イラン・イスラム革命とは、まさにハイジにでてくるおじいさんのような白いお髭を蓄えたホメイニ師っていう人が国王批判をして逮捕&国外追放されたことを皮切りに起こった革命。「それはちがくない!?」って民主化を求める、王制打倒運動が国内で広がっていきました。詰んだ国王の代わりに、1979年にホメイニ師が母国イランに帰ってきて、「イスラム共和国作るよ!」ってなったのが、イラン・イスラム革命。そこからイランは厳格なシーア派国家になったのだけれど、周りのイスラム諸国はスンニ派で、イランの革命の波が広がらないかとビンビンに警戒してたんだって。アメリカとも対立関係になり、ピリピリし始めた。

 

そんな革命があった次の年、1980年に、イラン・イラク戦争が始まりました。イラクとイランの間を流れる川の使用権と、石油の輸出が問題になって、欧米諸国とソ連イラクフセイン政権をサポートした。1988年に停戦が成立するまで、他国家を巻きこんで8年間に及んだ戦争。長い…。打撃もかなり大きいものでした。そしてそのあと湾岸戦争が始まったんです。

 

Zaraは、小さい頃に体験した戦争のことを話してくれた。

サイレンが聞こえてきたら、お母さんに抱っこされて防空壕に駆け込む日々。

今も、サイレンの音や大きい爆発音を聞くと、その時の情景がフラッシュバックするんだって言っていた。

 

私はスウェーデンに来るまで、戦争を体験した友達には会ったことがなかった。

私にとって、戦争は遠くで起こっているものだった。

恥ずかしいけど、本当にテレビの向こうの話だった。

 

でも、私より13年間長く生きていて、育った国も文化も環境も違って、そして実際に戦争を体験した人が、自分の目の前にいて、生きている。

同じ机で、あたたかいごはんを一緒に食べている。

辛かった経験を、私に共有してくれている。

 

話してくれて、ありがとう。という言葉しか出てこなかった。

 

 

話を聞いている時、戦争の話をするひいおじいちゃんの顔が、私の頭をよぎった。

 

戦争は、あかん。って言葉と一緒に。

 

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でも最近、すごく不穏だ。ニュースを見ていて、胸が本当にざわざわする。

なんだか、世界が行っては行けない方向に流れていっている気がする。

 

 

先々月にトランプが発表した大統領令。特定の7ヶ国の国籍を持つ人は、アメリカには一時的に入国を禁止された。その7つの国の中に、イランがあった。

Zaraのイラン人の友達は、この大統領令によって、夢が粉々になったと言っていた。

とっても優秀な女性で、やっとアメリカの大学で働けることになって、たくさんの希望をスーツケースにつめこんでいた矢先、航空会社から、「イラン人だから」という理由で搭乗を拒否されたらしい。

Zaraに泣きながら電話してきたんだって。

 

Zaraもそれを聞いて苦しかったって言ってた。

 

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そして、プラハでもう1人、イラン人の方に会ったんだ。

その方はZaraの友達で、今はプラハでラジオ局に勤めている人だった。

 

一緒にご飯を食べていて、いろいろ仕事のこととか今までやってきたこととかを聞いていた中で一番衝撃的だったことは、

 

「イランには一生帰れないんだ、アメリカ系の会社に勤めているから」

 

っていう事実だった。

 

イランに帰りたいけど、もし帰ったらスパイと疑われて命が危ないから、もうここ十数年帰ってないんだって。そしてこれからも帰れないらしい。

 

だから家族がいつもチェコに来てくれるんだ。

さみしいけど、自分の可能性を広げたかったし、自分で選んだ道だからね。

でも、本当にイランは大好きだし、いつか絶対に戻りたいって思ってる。難しいことだけど。

 

って言いながら、彼は自分の犬を優しくなでた。

 

この犬は、イランで飼った犬なんだよ。

こいつといると、イランでの思い出を思い出すんだ。

 

 

人生で大事なものってなんだと思う?って聞いたら、

HOME

って返ってきた。

 

 

帰れるHOMEがあるってことは、当たり前ではないんだな…。

 

 

国籍が夢を潰したりする世界があるということ、

自分のふるさとに帰れなくなる世界があるということ、

そしてそれは全く遠くの世界ではないということを、目の当たりにしました。

 

 

私がそういう状況に置かれたら、どう思うんだろう。

自分が生まれた国を恨んでしまうのかな、世界を変えてやろうとアクションを起こすのかな。わからなかった。

 

 

この世界が大事にしているものってなんなんだろう。

人の中身、性格よりも、その人の「国籍」や「民族」や「宗教」が最近より重視されて始めたように思う。

良いことなのか、悪いことなのか。

国益を守るための正義なのか、差別的で排他的な悪なのか。

グローバル化という言葉が讃えられていた頃からの反動なのか。

いろんな見方があるから、簡単にright,wrongに仕分けられる問題ではないとは分かっているけど。

 

国籍とか民族とか宗教っていう大事なアイデンティティのひとつが、時にジャッジされるラベルとなって悲しい思いをしている人が世の中にたくさんいることを、忘れてはいけないな、と感じています。

 

 

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100%のフルーツジュース!

 

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中にはアイスが入ってるよ!

 

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これはスターバックスのドーナツ。

このスターバックスは丘の上にあって、とってもいい眺めなんです!

街を一望できます。

 

 

Zaraとゆっくり街を歩いていて、地元の人と仲良くなったり、適当に道を歩いていたら迷子になったけど思いがけず素敵なオルゴールのお店を発見したり、店員さんとプラハの歴史について語ったりして。なんだかとってもわくわくが多かった旅でした。

 

 

「旅も人生も、予定を立てすぎちゃだめだと思うの、小さな偶然が起きるためのスペースを持っとかなきゃね」

 

 

2人で予定をがっちがちに立てず、北の方に行ってみるか〜、ってかんじで街をプラプラ歩いていたら、あるおじさんと仲良くなって、教会でのコンサートに呼んでくれたんだ!

 

ちょっとチケットも安くしてくれて、おまけに最前列に座らせてくれた。

 

パッヘルベルのカノンの生演奏を聞けて、涙ちょちょぎれそうになりました。

自分の名前の由来であるこの曲をプラハで聞けるとは。

 

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あと、心理学を勉強している彼女曰く、旅はたくさんするといいらしい。

 

目の前の道を曲がろうか、まっすぐ行こうか。

どうやって目的地まで行こうか。

誰に話しかけようか。

 

常に選択することが求められる。

 

そして、旅の中で、人と関わって、その土地の文化や価値観を吸収して、自分の持っているものと照らし合わせて、自分の価値観がまた作られていく。

 

判断力や行動力、コミュニケーション力が鍛えられるんだって。

 

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選択すること、

自分がどこにいるか把握すること、

そして積極的にソーシャライズすること

この3つは本当に大事なものだなぁーって、このプラハの旅で思ったよ。

 

これは旅だけじゃなくて、人生全体にも言えることだよね。

 

Zaraは、人生で大事なのは「とにかく今いる環境、今起きていることを楽しむこと」とも言ってたなぁ。

 

 

スウェーデンに留学できて、こうやっていろんなバックグラウンドを持った人と話ができて、自分の歩んできた道をちょっと振り返っては、これからどういうふうに歩いていこうかなーって考える機会にあふれているこの環境に感謝しなきゃだね、って話していました。

 

 

イランの公用語であるペルシャ語で、ありがとうは「مرسی۔」って言うんだって。

メルシーと発音するよ。フランス語と一緒だ!

ペルシャ語は、東洋のフランス語とも呼ばれてるらしい。ほぇ〜

 

 

メルシーZara!イランでまた会おうね!

 

 

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